今回からmimiオーディオさんからレビュー記事の転載をさせていただくことになりました。西野績葉(にしのせきよう)と申します。mimiオーディオさんからレビュー記事の出稿依頼が来たため、時々レビューやコラムなどを執筆いたします。
NICEHCKより発売された新製品イヤホン「Tears(涙)」を試聴しました。本機は、有限要素解析(FEA)の導入や内部配線に6N単結晶銀を採用するなど、普及価格帯ながらも音質への強いこだわりが見て取れる意欲的なモデルです。
NICEHCK Tears 製品の構成と外観
筐体は樹脂製ですが、その安っぽさはあまり感じられません。一方で、付属ケーブルは正直なところチープな印象は否めず、この点で価格帯を感じさせる要素だと言えます。開発元が「Etymotic Target」を目標としていることや、新しいイヤーシミュレーターを使用しているという情報からは、音響設計への強い意志が窺えます。付属品としてはNICEHCK 07イヤピースとケーブルタイが同梱されていました。
NICEHCK Tears 音質の印象と評価
ドライバ構成は1DD(ダイナミックドライバ)です。全体的な音質バランスは非常にナチュラルで、付帯音が少なく、耳に馴染みやすいサウンドだと感じました。
- 全帯域のバランス:概ね温かみのある聞き心地でありながら、チューニング自体はニュートラルで、冷たさも併せ持つ印象です。低音域、中音域、高音域の量がすべて適正であり、変な強調感がなく、非常に調整が取れているという印象を強く受けました。
- 低音域:低音域は膨らむ傾向はありますが、膨らみすぎることはなく、ぼわつくこともありません。
- 中音域・高音域:中音域も適切に配置され、特に中高音の細部の表現と空間表現には納得感があります。高音域の伸び方にも不自然な強調がなく、極めて自然な音を目指していることが分かります。
- 響きと定位:本機は筐体を響かせて音に「味」を出すGK Kuntenのようなモデルとは異なり、極力付帯音を感じさせない設計思想が貫かれています。響きや制動の点では価格帯相応の部分はあるものの、左右のドライバが揃っていて音の差が少なく、この価格帯の中では定位感が良い印象を受けました。
NICEHCK Tears Type-C版の優位性
本製品はType-C版の購入が強く推奨されます。Type-C版では公式アプリを利用でき、Android端末であればDSP(イコライザー)の調整が可能です。アプリを試したところ、製品はきちんと検出され、EQは3種類用意されていました。
自分で設定できる8ポイントのパラメトリックイコライザーはゲインの調整も十分で、非常に強力です。これを機にパラメトリックイコライザーにトライしてみてもいいと思います。それだけでもDSP版の価値が高いです。
謎のオプションである「伝説の拡散」は、不自然ではない程度に音が広がる感覚を付加してくれました。疑似サラウンドのような不自然な感じはしませんので積極的に使っていきたいオプションです。
NICEHCK Tears まとめ
NICEHCK Tearsは、実売3000円から4000円弱という普及価格帯において、適正な音響バランスを追求した非常に良心的なモデルだと評価できます。
特にConsと呼べる弱点がないことが本機の特長ですが、強いて言えば、オーディオマニア目線で機材の凄みを感じさせるような迫力のある音を出すというよりは、ひたすら自然な音を(筐体の制限の中でですが、注意深く設計して)実現しているという印象です。こうした入門機において妥協のない設計を行っている点は評価に値します。
金属筐体の響きを好む方を除けば、また価格帯なりの限界は感じさせますが「もうこれで十分ではないか」と提案したくなるほどの完成度を持っています。購入時は機能面で優位なType-C版の購入を強く推奨します。


